
はじめに
本書は、「非行」と向き合う親たちの会(通称・あめあがりの会)が編集した、体験記 集の第四集となります。
第一集は、1999年9月、あめあがりの会が誕生して3年後に、広く原稿を公募し、 集まった多くの原稿から選考させていただき刊行した、『ARASHI─その時』です。
第二集は、それから3年後の2002年4月に、『絆』のタイトルで刊行しました。
第一集の本には、14人の体験記が掲載されています。「非行」の問題を率直に綴ったこの本は、全国各地で親たちが孤独と闘いながら懸命に生きている姿を映し出し、多くのマスコミにも取り上げていただきました。
寄せていただいた原稿は、本人のもの以外は、すべてが母親で、父親のものはありませんでした。子どもに問題が起こり、大変な嵐の時にそれと懸命に向き合っているのはやはり母親だけなのだろうかと、日本の子育て事情の一端が垣間見えたようにも感じました。
ところが第二集には、5人の母親、3人の父親、そして、「非行」当事者本人と中学校 教師と保護司がそれぞれ1人ずつ、計11人が原稿を寄せています。父親の1人は、我が 子が被害を被った方でした。多様な方々が、会の活動や親たちの思いに関心を持ってくれて、広がりが感じられました。
そして、第三集はその2年後に、当事者本人とそのきょうだいの声だけを集めて、『NAMIDA―それぞれの軌跡』を刊行することができました。18歳から28歳までの11人の手記には、後悔の涙、くやし涙、悲しい涙、喜びの涙……いろいろな涙が読み取 れる感動の手記集となりました。
あめあがりの会は、それから15年を経た2018年(平成30年)3月に、「未来を強くする子育てプロジェクト」子育て支援活動の表彰(住友生命保険主催)において、文部科学大臣賞をいただくという栄誉を受けました。本書は、その受賞を記念して、新たな体験記集を発行することを決めて公募を行い、約2年がかかってしまいましたが、寄せられた手記をまとめたものです。
会が誕生して24年となりました。子育ての環境は、さまざまな変化を見せています。
そして今、新型コロナウイルスに世界中が翻弄されているさなかです。この本が皆様に届いたとき、その状況は変わっているでしょうか。
なお、諸事情により、仮名で掲載されている手記がありますことをご了承ください。
もくじ
はじめに
我が家の十年戦争から 今野智恵
息子との格闘の果てに 中川菖子
これでもか、これでもかだけど エム
逮捕からスタートしてもいいじゃない 小林亜由
大雨が降るかもしれないけど 美佳優輝
虐待からの癒し──私の非行と虐待の連鎖 みやこ
息子に鍛えられて あんどうなつ
私と息子の八年間 浜 笑美子
親子の絆──父親として 菊池 明
鑑別所で変わると決意した息子へ とん
理想を押し付けないように 平井路子
たくさんの人の力を借りて あかり
雨あがりを信じて ユリ
どうか排除しないで、の思い 澤田美樹
息子は私に、人生を考えるチャンスをくれた 中村きよみ
妻亡きあとに二人のヤンチャ息子と 秋元晴男
前を向いて生きる─あとがきに代えて 春野すみれ