
少年非行と修復的司法
山田由紀子 著/2016年5月/860円(税別)
著者からのメッセージ
弁護士の仕事をしていると、さまざまな人間関係の紛争に出会う。離婚事件での夫婦、少年事件での親子、相続問題での兄弟、近隣紛争での隣人同士……、どの紛争でも、ボタンの掛け違いのようなコミュニケーション不足から疑心暗鬼になり、お互いが持たざるを得ない距離や対立をはるかに超える距離や対立ができてしまっていることを感じる。
そこに公平・中立な第三者が入り、それぞれの話しを十分聞き、それを相手に少しずつ伝えていくと、掛け違っていたボタンの位置が少しずつ直っていく。対話の会の活動は、そうした活動なのだと実感している。これからも心優しいスタッフとともに、ふつうの地域住民の一人として、ボタンの掛け直しに努めていきたいと思っている。
そして、今はまだ全国の何か所かにしかない対話の会のような活動が全国に広がるよう、進行役養成講座やセミナーなどを通じて、各地に対話の拠点を作ることが、私の大きな夢である。
(あとがきより)
もくじ
1 修復的司法と被害者加害者の対話
NPO法人対話の会
非行をおかした少年にとっての対話の意義
あるバイク窃盗の少年の場合
バイクを盗まれたY君との対話
バイクを盗まれた町工場の社長さん3・工員さんとの対話
2つの対話がK君にもたらしたもの
被害者にとっても有益な対話
どうして対話の会の活動を始めたのか
2 『対話の会』の進め方
対話の会への申し込み
対話の会の準備
十分な準備を経て開かれる『対話の会』
「対話の会」のフォローアップ
3 『対話の会』で出会った被害者・加害少年
被害は物だけではない──「住居侵入・窃盗ケース」
償いの方法はお金だけではない──「非現住建造物放火ケース」
まだ許してはいないけど、もう怒ってないよ──「殺人未遂ケース」
よく話してくれたわね──「傷害致死ケース」
4 性犯罪では『対話』は無理?
被害者加害者の対話が無理な犯罪があるのか?
三つの強制わいせつケースに共通した被害者のニーズ
解決策のヒント
地図上の住み分けと、素知らぬふりの約束
対話の会と合意文書の取り交わし
修復的対話と既存の司法の具体的な違い
5 『家族との対話』が少年にもたらすもの
被害者加害者対話の会と『家族の対話の会』
コンビニ強盗をして被害者にケガをさせてしまったコウジ君
少年鑑別所でのコウジ君との面談
お母さんとコウジ君の『対話の会』
お兄ちゃんとコウジ君の『対話の会』
対話のあとのコウジ君
6 応用してみませんか? 少年院内での「被害者の視点を取り入れた教育」
少年院内での「被害者の視点を取り入れた教育」
プログラムの概要
少年たちの思い込みと実際の被害者
少年たちの〝ハハァ体験〟や〝気づき〟
〝気づき〟の援助をする意義とその応用
7 対話によるいじめの予防と克服
いじめって何?
理想的ないじめ対応
「修復的サークル」によるいじめ予防
「修復的対話」によるいじめ克服
あとがき
NPO法人 対話の会
─犯罪やいじめをめぐる被害者・加害者・地域社会のために
お互いが新たな一歩を踏み出すために大切なのは「修復的対話」です。
お互いが語り合うことで、どうしたら被害者が癒され、加害者が立ち直れるかを考える場を提供します。
私たちの活動は、すべて市民ボランティアによって支えられています。
それは、ひとりひとりのボランティアが、犯罪やトラブルを他人事ではなく、
いつ自分や自分の大切な人が加害者になってしまうかもしれない、
あるいは被害者になってしまうかもしれないものと考えているからです。
犯罪や人間関係のトラブルは、地域社会の中にポッカリと開いてしまった〝穴〟のようです。
刑罰や損害賠償だけでは、その穴は埋まりません。
加害者には、自分が開けてしまった〝穴〟の深さをしっかり見つめてほしい。
その上で、加害者が自ら汗してその〝穴〟を埋めるよう、それによって被害者の心の〝穴〟も
少しは埋められるよう、地域の一員として、私たちもお手伝いしていきたいのです。
理事長 山田由紀子
〔連絡先〕〒270-2251
千葉県松戸市金ヶ作300
TEL 047-303-3666
メール taiwanokai@white.plala.or.jp