その手の温もりを感じながら

著者:西村重樹
2026年3月20日発行
ISBN 978-4-915143-79-3 本体 1900円

「はじめに」(抜粋)

私の視力は、両眼ともについに「ゼロ」となった。
二〇二五年六月で私は六十七歳となった。四十八歳で右目の視力を失い、六十歳を迎える前に左目の視力が「計測不能」とされた。右目は光も感じないが、左目には、光を感じる部分がかすかに残されている。だから昼か夜かは判断できるが、物を見ることはできない。目の前に白いカーテンが吊り下げられているように感じるのだ。光は感じるので、完全に失明しているわけではない。

(略)

私のこれまでの人生の中には、人の優しさを感じない時代があった。「感じない」というよりも「感じ取ろうとしない」という方が正しいかもしれない。しかし、自分の障害を受け入れたときから、「人の優しさに触れたい」と思うようになった。人の温もりほど温かいものはない。そんな温もりを求めて歩んで来た日々を振り返ってみたい。(「はじめに」より抜粋)

もくじ

はじめに
 第1章 障害を隠し続けて
  1 過去の記憶と触覚を頼りに
  2 目の異常を感じ始めたものの…
  3 不安な中学校時代
  4 悪夢の宣告から這い上がる
  5 見えないことを隠しての教師生活
  6 盲学校での出会いが自分を変えた
 第2章 出会いと繋がり
  1 生徒に手を引いてもらって
  2 さまざまな生徒との出会い
  3 学校で失ったものを学校で取り戻す
  4 凍った空気が溶けていく
  5 生徒たち・教師たち・みんなが繋がって
 第3章 失敗から学ぶ 生徒と共に
  1 たった一人の卒業式
  2 生徒と共に禁煙運動
  3 薬物依存、オーバードーズとの闘い
  4 「五人組」がやって来た
  5 何度失敗をしても
  6 見ることをあきらめて
 第4章 不安が安心へと変わるとき
  1 生徒が母となるとき
  2 自分を大切にするってどういうこと?
  3 「生」と「性」
  4 「私には霊が付いている」
  5 闇の中に見つけた一筋の光
  6 卒業をあきらめない
  7 新型コロナウイルスと向き合って
  8 障害と向き合う
おわりに ──今思うこと