
ISBN978-4-915143-66-3 C0037 本体 1600円
はじめに(抜粋)
私の目は、もうすぐ完全に光を失うだろう。高校三年一八歳の夏、大学病院で「あと二年ほどで見えなくなる」と言われ、四〇年以上がたつ。
現在、視力は右が0.0、左は0.01。一人で歩くのが困難になった。
今、校長として高校に勤務している。生徒たちの姿や形はほとんどわからないが、彼らと触れ合うのが大好きだ。できるだけたくさんの生徒の声を聞き、声で誰かを判断する。
(中略)
他の人の二生分ぐらい生きたほどの波乱の人生を経験したように思う。すべての始まりはあの18歳の夏、医師の一言から始まった。人生をどう歩むべきかわからず、死が心をよぎったこともあったが、この目のことは誰にも言えなかった。そして、暴力団。劇的な脱退。ヤンキー担当教師、解雇、裁判闘争、職場復帰、理想の高校を目指した日々……。
(中略)
そんな私も還暦を過ぎ、教師生活の終了もそんなに遠くない。
人は「大変なことがいっぱいで頑張ったね」と言うが、そんなふうには感じていない。 「努力」という言葉が嫌いで、その時の力量に合わせて考え、信念に基づき行動してきた。 力量と信念は変わるもので無理して作るものではないと考えている。
一人で歩んで来たわけではもちろんないが、最終的に頼れるのは自分しかいないと思った時代が長かったし、今もそうかもしれない。自分の信念に基づいて、自分で判断し、孤立せず孤独を楽しむという気持ちで、誰にも支配されず我が道を歩いてきた。そんな人生を振り返ってみる。
もくじ
はじめに
第一章 一八歳の分岐点
第二章 裏社会との決別
第三章 教師になる!
第四章 運命の出会い
第五章 教師という天職
第六章 闘いの日々が始まる
第七章 ついに生まれた「真の学校」
第八章 家族崩壊の危機も乗り越え
第九章 どんな生徒の叫びも受け止める
和斗──やっと夢を見つけたが……。
茂──シンナーで現実逃避の日々を乗り越えて
瞳 ── ヤングケアラー
正 ── 人間不信、「死にたい」からの脱出
智子──妊娠、出産を支えて
まみ──優しい彼女にもいろんな顔がある
真一──悪を極めるか、高校を卒業するか
雄大──逮捕五度、その経験も無駄にしない
小百合 ── 男性依存からの脱却
リンダ ── 外国の文化に縛られながらも
恵 ── 自傷行為・薬物依存に苦しみながら
舞 ── 自分の成長を生徒の中に見る
付記・飛躍している姿が、一番彼らしい ── 妻からひとこと
あとがきに代えて ── 教師の役割は、切り捨てることではない