道 ─前を向いて歩き続けるために 親たちの「非行」体験〈第4集〉

「非行」と向き合う親たちの会 編/2020年12月/1600円(税別)

はじめに

本書は、「非行」と向き合う親たちの会(通称・あめあがりの会)が編集した、体験記 集の第四集となります。
第一集は、1999年9月、あめあがりの会が誕生して3年後に、広く原稿を公募し、 集まった多くの原稿から選考させていただき刊行した、『ARASHI─その時』です。
第二集は、それから3年後の2002年4月に、『絆』のタイトルで刊行しました。
第一集の本には、14人の体験記が掲載されています。「非行」の問題を率直に綴ったこの本は、全国各地で親たちが孤独と闘いながら懸命に生きている姿を映し出し、多くのマスコミにも取り上げていただきました。

寄せていただいた原稿は、本人のもの以外は、すべてが母親で、父親のものはありませんでした。子どもに問題が起こり、大変な嵐の時にそれと懸命に向き合っているのはやはり母親だけなのだろうかと、日本の子育て事情の一端が垣間見えたようにも感じました。
ところが第二集には、5人の母親、3人の父親、そして、「非行」当事者本人と中学校 教師と保護司がそれぞれ1人ずつ、計11人が原稿を寄せています。父親の1人は、我が 子が被害を被った方でした。多様な方々が、会の活動や親たちの思いに関心を持ってくれて、広がりが感じられました。
そして、第三集はその2年後に、当事者本人とそのきょうだいの声だけを集めて、『NAMIDA―それぞれの軌跡』を刊行することができました。18歳から28歳までの11人の手記には、後悔の涙、くやし涙、悲しい涙、喜びの涙……いろいろな涙が読み取 れる感動の手記集となりました。

あめあがりの会は、それから15年を経た2018年(平成30年)3月に、「未来を強くする子育てプロジェクト」子育て支援活動の表彰(住友生命保険主催)において、文部科学大臣賞をいただくという栄誉を受けました。本書は、その受賞を記念して、新たな体験記集を発行することを決めて公募を行い、約2年がかかってしまいましたが、寄せられた手記をまとめたものです。

会が誕生して24年となりました。子育ての環境は、さまざまな変化を見せています。
そして今、新型コロナウイルスに世界中が翻弄されているさなかです。この本が皆様に届いたとき、その状況は変わっているでしょうか。
なお、諸事情により、仮名で掲載されている手記がありますことをご了承ください。

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つぐなうために 受刑者が見た修復的司法の真実と光

つぐなうために 受刑者が見た修復的司法の真実と光

山田由紀子(弁護士)/AKIRA(受刑者)著、装丁 平和子/2020年8月/1200円(税別)

著者からのメッセージ

山田由紀子

対話の会は、当初少年非行事件での被害者加害者対話を中心に活動していましたが、実践の積み上げの中で、その活動をいじめや成人犯罪、さらには職場でのセクハラやパワハラなどのハラスメントなどに広げてきました。
そんななか、二〇一六年九月に、刑務所で懲役刑を受刑中のAKIRA氏から初めて手紙が届きました。対話の会のこと、修復的司法のことを詳しく知りたいと言うのです。
AKIRA氏の十年余の体験は、いわば『体験的修復的司法』とも言えるものです。そして、日頃私が「〈被害者の被害回復〉と〈加害者の立ち直り〉、その両方のために、修復的司法はぜひとも広められるべきだ」と主張していることやその理由を、まさに体験的に裏付け実証してくれるものです。
私は、被害者と加害者の必要以上に引き裂かれている遠い距離を縮めるものは、修復的対話による〝気づき〟だと考えています。本書が、被害者・加害者についての人々の見る目や被害者支援・受刑者の処遇に携わる専門職の方々の活動に、ひとつの〝気づき〟をもたらすものとなることを切に願っております。

AKIRA

本書は、対話の会の山田理事長との往復書簡で、私という罪をおかした一個人が逮捕から裁判を経て受刑生活中に反省し、被害者への謝罪・被害弁償に至るまでの十年余りの心の変遷を振り返ったものですが、現行刑事司法システムの各段階における被害者への謝罪や弁償に関する対応、少年刑務所と成人刑務所の違い、私が痛感した修復的司法の必要性などについて、僭越ながら言及しています。
刑罰とは一体何のために、誰のためにあるのでしょうか。
一般に流布している〝被害者像〟〝加害者像〟は実像でしょうか。
被害者の癒し・被害の回復や立ち直りに関して必要なことは、加害者の反省や改善更生・再犯防止といった地域社会での再統合のために必要なことと相反するものなのでしょうか。
犯罪という害悪をどのように捉え、いかに対処していくことが当事者たる被害者・加害者のため、ひいては地域社会のためになるのか、一般の人々が担うべき役割があるとすれば、それはどのようなものかなどについて、本書がみなさまに新たな視点に立って考えていただく契機となれば望外の幸せです。

(「はじめに」より抜粋) 続きを読む