NAMIDA(涙)それぞれの軌跡
私たちの「非行」体験 第3集
「非行」と向き合う親たちの会 編/2004年4月/1500円(税込)
★日本図書館協会選定図書
概要
どの子にも起こりうる「非行」「少年事件」。なぜ子どもたちは自分を傷つけ、周囲を傷つけながら荒れていくのか。その激しい嵐の時を全力で支え、向き合った体験から映し出された親と子、教師と生徒など、大人と子どもを結ぶ様々な絆。
母親と本人の体験を集めた『ARASHI−その時』(既刊)に続き、父親、教師、保護司、施設職員などを加え、子どもたちの心の真実に迫った待望の手記集第2集!
もくじ
* 17歳 心の傷跡(20歳・女子・アルバイト)
* 家族の絆(22歳・女子・大学生)
* 僕を支えてくれた「出会い」(26歳・男子・会計事務所勤務)
* 私の青春(18歳・女子・アルバイト)
* 10年の歳月を経て思う(28歳・男子・学習塾経営)
* 兄から、妹から(24歳・男子・大学生/14歳・女子・中学生)
* 私にとっての心の居場所(22歳・女子・小学校講師、ダンサー)
* 最後の救いになるもの(28歳・男子・大工)
* 絶対に繰り返さない!(20歳・男子・自動車整備士)
* 失いたくない大事なもの(25歳・女子・トラックドライバー)
* 子どもの自己回復力とそれを支えたもの 能重真作
* 彼、彼女からの熱いメッセージ 浅川道雄 大学、個人などさまざまな方々から反響をいただきました。ここで、その一部をご紹介します。
読者のこえ
この度、私が福祉系のある大学で非行問題の講義をした際、『NAMIDA』の中の「ありささんの詩」と「重原さんの手記」を紹介したところ、学生から感動的な感想が寄せられましたので、その一部をお送りします。(木村隆夫)
心にすごく感じるものがありました。特に「ありささん」の文を聞いた時は、涙があふれてきました。一緒にテレビを見た、自分の話を聞いてくれた、そのようなことに喜びを感じたという彼女の言葉に、それまでの彼女の想いや状況がわかり苦しくなりました。(2学年・女子)
少年非行に関して見方が変わってきたなぁと感じました。自分の中では、当の本人たちが 100%って思っていたけど、周りの社会にも原因があり、大人にも原因があるのかということに気づきました。何か非行をするということは、子どもからの助けを求めるサインだということ。「ありささんの詩」から、また様々な実際の声を聞いてみると、一人ひとりが命がけで生きていこうとしている必死な姿が、痛いほど伝わってきた。”子どもは未完成ではなく、一人の人間だ” というこの言葉は、子どもを苦しめている社会に、もっと響きわたればいいのにと感じました。(2学年・女子)
今の社会は、すごいことになってるなと感じた。木村先生の昔の話を聞いて、近所で子どもを見て行くことが大切だと思った。確かに、子どもが大金を持っていたら、不思議なことだから、気づいたらお店とか話を聞いてあげる社会にしていけたら、凶悪犯罪も減っていくと思う(中略) 親に愛されたいから、自分自身を見てほしいから非行する。少女の気持ちがすごく伝わってくる詩だった。子どもが生まれたらいっぱい愛情をあげたい。(2学年・女子)
最も心に残ったのは「しげはらさんの手記」でした。「高校の先生」や「両親」という止まり木を見つけたけんじさんの更生は、とても温かいもので涙がこぼれてしまいました…。”相手を思いやるやさしさの大切さ” これは実は私自身の課題でもあるのです。けんじさんは本当のやさしさを見つけたのだなぁと思いました。私は日々、みんなに支えられていると思っています。やさしさいっぱい身体に浴びています。でもそれ故に足りないところがあるのです。”17歳の心の傷あと”や”けんじさん”の心の寂しさが、身にしみてまではわかってあげられないのです。そういうことを考えると「非行」ということに表れたしまったけんじさんたちは、人の痛みのわかる深い人間になっているように思いました。(3学年・女子)
「ありささんの詩」を聞いて大変切ない気持ちでいっぱいになりました。木村先生が話して下さったように、非行がいけないということが問題にされ、その子が抱えている苦しみを見ようとしないということを実感しました。情報をうのみにして画一的な見方をしていてはいけないなと思いました。犯罪を犯した少年少女の心の奥にあるものを大切にし、社会全体が健全な環境でなくてはいけないと分かりました。(2学年・女子)
14、15歳頃私は親に反抗して壁に穴を開けたりガラスを割ったりしました。しかし16歳の時に、柔道の部活動中に頭を殴打、意識不明3週間。その時に親が私を支えて下さった愛情は人生の宝物です。現在は必死にリハビリをして生きている毎日ですが、私も人に認めて欲しかったと思っています。(2学年・男子)
18歳のありささんの詩を聞いて、ズキッときました。誰も心配してくれない、生きている意味を感じられなくなると、本当に不安になり、どうしようもなくなってしまいます。しかしそんな時、彼の母に出会い更生していく姿はとてもステキでした。彼女のように心配し、気にかけてくれる人ができたらよいけど、できなくて更生できない人がいると思います。その人たちは今、本当に助けを求めていると思います。少しでも多くの人を助けたいと思いました。(2学年・女子)
少女の詩を聞いて、非行する少年、少女の気持ちがとてもせつなく、その子自身も苦しんでいることがわかった。ゼミで少年非行について調べたことがあったが、そこでキーワードになったのは「無条件の愛」だった。「見てもらいたい」「愛してほしい」など少年たちの気持ちは親や周りの人に向けられている。最近の少年による事件でも、問われるのは親、学校関係者が多い。しかし、本当の原因は社会環境にあると思う。木村先生が「社会の問題としてとらえる」とおっしゃっていて、全くその通りだと思った。みんな、自分とは関係ないと知らん顔して目を向けてない。でも、そんな社会を変えていかなくてはならない。(2学年・女子)
この間は、『嵐』『絆』『涙』の本を紹介していただいてありがとうございました。素敵な本にめぐりあうことができました。ほとんど泣きながら読んでいました。少し長くなりますが感想を聞いてください。
まずは、自分のことからお話します。中学時代は、学校でいわゆる”非行少年”とよばれる 友達とよく一緒にいました。その子たちの影響もあり、少しは親を悩ませるようなことをしていたかもしれません。
しかし、その頃はあまり親のことを考えず、度を越えない程度で過ごしていました。高校に 入り、勉強をする意味がわからず、勉強をしなくなった私はとうとう全く学校の授業について いけなくなり、留年の危険などで親に心配ばかりかけていました。それでも私は、親を拒絶し、自分が正しいと信じ込み、周りを見ようとはしませんでした。
私の母親は、高校の教師で、「とにかく大学まではいって欲しい」と必死でした。「その後はもう何も言わないから。好きにしていいから」と。私なりに必死に抵抗しましたが、3年間に渡る親とのいざこざが耐えられなくなり、大学さえ行けば私は自由になれると信じ、高校を卒業して1年間予備校に通いました。
そのなかで私は、自分のようにつらい思いをしている人たちを助けたいと思うようになり、カウンセラーを目指して大学受験をすることに決めました。無事に大学に合格し、私は嫌だった家を出ました。
親と離れて暮らすようになり1年が経つ頃から、厳しかった父親の態度が変わり始めました。私を認めてくれなかった父親が少しずつそのままの私を受け入れていってくれているのを感 じることができました。その頃私は、一般的に悪い友達とよく遊んでいました。
ある日、そのメンバーがクスリをしようといって私にもすすめてきました。そのとき一瞬の出来事だったのですが、私の頭に、両親や恋人の顔が浮かんできたのです。「クスリをやったら私はこの人たちを裏切ることになってしまう。」私ははっきりと誘いを断りました。これが私の研究のきっかけです。このことから、非行をするかしないかは、自分を愛してくれる人がいると感じられていることが重要なのではないかと思い始めました。
その後出会った友達が、マリファナにはまってしまいましたが、きっと私の愛情が届けばこの子はやめてくれると信じて、あきらめませんでした。時間はかかりましたが、彼はやめてくれました。やめられた理由を聞くと「お前がいたからや」と言ってくれました。
私は、自分の経験からしか非行についてはわかりませんでした。しかし、『嵐』『絆』『涙』を読んで、そういった重要な出会いが非行してしまった本人を変えていっているとあらためて感じました。また愛してくれている人を感じることで人間はここまで変わることができるんだと感動しました。
そして、非行を経験した一人ひとりの純粋さ、感受性の強さ、勇気に気づきました。彼らは、人として当たり前の欲求を持ち、それをかなえられない環境の中で、必死に非行という形で自分を維持しているんだと思います。一人ひとりの体験談の最後に、嵐が過ぎ去って本当によかったと心から思いました。
私は、大人と子どもの立場のどちらに立っているかと考えると、やはりまだまだ子どもで、親が陰でどんな思いをしているのかということがわかりませんでした。容易に、親をせめてしまうことすらありました。
しかし、これらの本から、はじめて親の生々しく、壮絶な苦しみを知りました。少なくとも、この3冊で語っていらっしゃる方々は、決して手を抜いてなんかいない、必死に子どもを愛してがんばってきている。ただ、その形が子どもにはわかりづらかっただけなんだと思いました。
一生懸命さが伝わり、非行を誰のせいにもできないと思いました。自分の子育てが間違っていたなんて思わないで欲しいと強く思いました。これらの方々に、私は脱帽です。
また、子どもを支えようとする親と、学校の連携がうまくいっていないことが印象的でした。そこがもう少しできていれば、子どもたちをこんなに苦しめないですんだのにと悔しくなることが多々ありました。
そこで、自分の行動を振り返ってみました。私は、大学院に入り、自閉症の子どものプレイセラピーをさせてもらっています。そのなかで、どうしてうまくいかないんだろうとあきらめかけたとき、「お母さんのほうがこの子をよくわかっているから、後はお母さんに任せよう。私ができることはした」と逃げていたことを思い出して自分が恥ずかしくなりました。お母さんたちは、自分ではもうどうしようもないからここへ来ているのに…。それを最後に私がつきかえしてどうするんだ!!
私が思っていた以上に、お母さんたちは必死で、孤独で、途方にくれていることを知りました。親の気持ちが理解できていなかったことを、私がこれまで関わってきた子どものお母さんにお詫びしたいです。ともに最後まで戦う。それには親も他人も関係ない。逃げ出すことは許されないと感じています。このことに気づくことができてよかったです。
親子だけに限らず、人と人は、お互いをたった一人の人間として、ありのままの心にお1対1で向きあうことが大切なんだということをこの本に教えられました。読みながら、何度も何度も自分のこれまでを振り返りました。そして、今の自分これからの自分について考えました。教えられることが多く、この本に出会えて本当によかったです。
非行の経験とは、まさに嵐ですね。でもそれを絆がおさめてくれる。そして嵐が過ぎ去るまで、たくさんの涙を流し、過ぎ去った時また涙を流す。その後は、よりいっそう強い強い絆が生まれるんですね。すばらしいタイトルだと読み終わってから思いました。
『あめあがり通信89号』(2004年11月20日)「交流のひろば」より
大阪・大学院生 アキ
『NAMIDA―それぞれの軌跡』に心打たれて
私は埼玉県で学童保育室を経営しています。先日、県が主催する指導員研修会に参加し、能重真作先生の講演を聞き、この本を買いました。私には子どもはいませんが、学童保育に来る子どもたちは自分の子のつもりで関わっている気持ちです。
まだまだ未熟で、心が通じ合えない時など、へこんでしまいます。でも、この本を読ませていただいて、やっぱり人を信じることの大切さ、子どもをありのまま受け止めることの大事さを、本当に感じることができました。
最初のありささんの詩を、学童保育の親たちに紹介しました。私も他の保護者も、ともすれば自分に余裕がないとき、あたる対象を社会的弱者に向けてしまうことを、してしまっている時があると思います。この詩にある「寂しさ」や「つらさ」を感じ、「あたたかさ」が必要な時に、私も含めて、少しでも大人に気づいてほしいと思いました。
OBとなった子どもたちがボランティアとして来てくれます。しかし一方で、子供時代に反抗期がなく「いい子」で育っていた子が、社会の冷たい仕打ちにあい、うつ病になり、相談に来る子もいます。問題はそれぞれありますが、強く暖かい気持ちを持って生きていくエネルギーをこの本からいただきました。
もし、うちの学童保育のOBから相談があった時には、この会を紹介したいと思います。
筆者の青年たちによろしくお伝えください。ありがとうございました。
『あめあがり通信93号』(2005年3月20日)「交流のひろば」より
埼玉県・今尾安徳
「非行」を考える全国交流集会に初めて参加いたしました。保護司活動の中で難問に、しばしば苦悩いたしておりました。「会」に参加いたし、諸先輩の経験談や沢山の貴重なお話しを拝聴し、大変勉強になりました。本書から計り知れない知的財産ももらいました。沢山の感動ありがとうございました。(東京都・男・69歳・会社役員)
私も18歳の男の子を持つ母親です。息子のことでいろいろなことがあり、かなり子育てで悩んでいる毎日です。この本に書いた子どもの気持ち、親の気持ちは家族の気持ちは十分分かります。
親以外の大人と出会える子は、自分の心を開いて打ち明けられ、いいアドバイスがもらえるけど、出会いのない子はどうなんでしょうか…。
この本を息子にも読んでみてと、テーブルに置いておきました。次の朝、昨日全部読んだよ、と一言でした。どう思ったか、一番聞きたかったのですが、とにかく読んでみたと聞いて、きっと何か感じるものがあったはずと、私は思っています。
言葉のやりとりは、なかなか難しいけど、体験した子どもの素直な気持ちは、この本で感じてくれたと思っています。(秋田県・女・47歳・パート)
大人の社会において1年間に3万人余りの人が自殺するこの頃、少年少女たちの非行が特別のことだとは思われません。大人の社会の裏返しだと思います。彼等、彼女達のメッセージは涙を誘いますが、私は私なりにメッセージを贈りたいと思います。
自由を欲するならば拮抗力を…、平等を欲するならば社会に対する抵抗を…。我々は貧乏人ではあるが絶対に貧困者ではない。(青森県・男・53歳・会社員)
涙が止まりませんでした。私も子どもの頃、アルコール中毒の父親に悩まされ、苦悩と葛藤の毎日でした。今でも当時のトラウマにとらわれることがあります。今日、本を読ませていただき、自分はまだまだだ、頑張らなくては、と勇気と元気をいただいたように思います。
今まで紆余曲折はありましたが、今年の4月に看護学校へ入学し、看護師になるという目標へ向かって頑張っています。とても良い本に出会えてと感謝しています。ありがとうございました。(北海道・女・28歳・看護学生)
私は将来、非行少年たちの更生をお手伝いする仕事につきたいと思っています。この本を読んで、私にもできることがあるならば、全身全霊を尽くして力になりたいと思いました。おそらく、いま非行のただ中にいる人にも影響を与えうる本だと思う。大きな力を持った本として、今後も出版を続けていって下さい。(福岡県・男・18歳・学生)
非行から立ち直った若者11人の体験記『NAMIDA』が出版されました。(中略)この本はベストセラーになって欲しいですね。十分、そうなりそうです。
単に本をたくさん売るという目的にとどまらず、この本ができたこと自体、そのプロセス(会の存在と価値ある活動)こそ、これまで存在していなかった社会資源であるという事実と、PTAや補導委員、教師、医師、警察、民生委員、そしてすべての大人たちに「非行」の原因は私たち自身が作り出していることを気づいてもらうためにも、この本を広める価値があります。(中略)
これは断じて「非行」に寛容になるということではなく、より厳しく「非行」を見つめ直すことが私たち一人ひとり、そして社会全体に問われているということですね。そういう意味で「あめあがりの会(『非行』と向き合う親たちの会)」「みちくさの会(いしかわ『非行』と向き合う親たちの会)」は、とてつもなく大きな課題に取り組もうとしているように思えます。
それは堂々めぐりの出口の見えない課題ではなく、すでに光が差し込んでいる出口に向かって着実にゆっくり進みながら、その過程こそに価値があるという緻密な活動、それが「共感」づくりですね。今回の『NAMIDA』の出版は、その象徴のような気がします。優れた活動がなければ絶対に作れない本ですから。(石川県・男・48歳・団体勤務)
裁判長からのすすめでこの本を読みました。何かのきっかけがあれば更生できると思った。残念なことに私の子どもも今、更生に向けて頑張っています。本に書いてあることを自分の子と照らし合わせ、涙が出ました。みんなに頑張って生きてほしいとも思いました。(兵庫県・女・45歳・医療事務)
家庭裁判所の裁判官から、この本のことを知りました。3度読み返しました。涙・涙・涙が止まりません。町を歩いている時も子どもたちを見かけては意味もなく涙ぐむ。胸が痛みます。私のできることが何かあると、心がどこかへ走ろうとしているのです。親たちの会の資料少しでも早く送ってください。(兵庫県・女・55歳・パート勤務)
16歳の私に帰って読ませていただきました。が、現実は中・高生の母です。今、私自身がなすべきことを考えました。子どもたちを守り育てるのは私たち大人! さっそく今村組(ダンスチーム)にメールし、可能であれば、先生に来鳥いただきたいと思っています。私自身のこと! 私の生き方(これからの)。仮の笑顔をつくりながらも生きていきます。私の目標は”自殺しないこと”。そのためにも(自分のことだけを考えるのではなく)これからどう生きていくかを考えました。
(追)3月に今村先生の講演会をしました。10月には今村組を呼ぶ予定です。この本に出会えて感謝しています。(鳥取県・女・48歳・会社員)