[新版] 布のいのち 人の心、くらし伝えて
堀切辰一 著/A5判120P/2004年3月/1000円(税込)
★日本図書館協会選定図書
解説
継ぎが当てられ、使い古された野良着や普段着たち。全国各地を訪ね歩いて集めた着物などを通して、時代の底辺を生きた人々の暮らしと、それを支えた「心」のかなしさ、健気さを語る。
たくさんのご要望にお応えし、2編を追加、加筆・改訂した《新版》。
本書は、多くの皆様のご要望から14年ぶりにリニューアル刊行したもので、著者・堀切辰一先生の特別の思い入れのある本です。今回、改訂新版刊行にあたり、読者の皆様へのお礼と感謝をこめて、特別価格にて発刊することといたしました。プレゼントなど、どうぞ堀切先生の布への心をお伝えいただければ幸いです。
集めた古い時代の野良着や普段着を見てずいぶん言われました。「なぜそんなぼろばかり集めるのですか、絹物できれいな着物ならお金になるのに」と。
「古い着物には哀しみや苦しみや嘆きなどがいっぱいに詰まっています。と同時にその貧しさに打ちひしがれずに、一途に生きてきた健気な心があれているからです」と答えることにしてきました。
僅か六、七十年前まで底辺に生きてきた人々の暮らしや心を、どんなに説明しても理解されないばかりか、今では伝説にさえなり得ません。
物質文明の発達は、わたしたちの暮らしに、想像もできなかった大きな恩恵を 与えてくれました。もっと便利にもっと豊かになるでしょう。
けれどもこの豊かさと引き換えに、わたしたちは失ってはならない、捨ててはな らない人の心を、惜しげもなくかなぐり捨ててしまいました。
忌まわしくおぞましい事件は秒刻みで起こっています。これからは更に更に起こるでしょう。
《人を愛する心》が轟音を響かせて崩壊しつつあります。それを問いたい思いで再版することにしました。
(『パッチワーク倶楽部』2004年7月号「私のとっておき」より)
もくじ
故郷に連なった絣の敷き布団
継ぎあてだらけの腰巻き
越後獅子舞の衣装
おむつの枚数
二枚の野良着はんてん
先生の晴着
軍旗のついた娼婦の衣装
鉋くずの布団
女炭坑夫のこと
着られなかった銘仙
心の貴婦人たち
重さに驚いた夜着
初めてのコート
千人針の思い出
許されなかった涙
もんぺが与えたもの
蚊帳のある暮らし
軍服と軍靴
葉っぱの死衣装
少女の乞食
型付絣
あけみの唄
白いチョゴリ
ぼろになった女工たち
「沖ぼだ」ぼ数は女の誇り
廃屋の佳人
更紗の夜着
“はんてん”が支えたもの