思春期問題シリーズ(4)
それでも愛してくれますか
〜非行克服の現場から
能重真作 著(「非行」と向き合う親たちの会 世話人代表、NPO法人 非行克服支援センター 理事長)
A5判 96P/903円(税込)/2003年4月
★ 日本図書館協会選定図書
解説
親の願いのように生きられない—、子どもの荒れの背景にある苦しい思い。
その思いに寄り添ったとき、真実の言葉がこぼれる。
親・教師に届けたい厳しくそして、あたたかいメッセージ。
報道される少年事件や、街にたむろする少年少女たちの姿から、大人たちは「子どもが変わった」と言います。そして、「いまの子どもが理解できない」と頭を抱えます。しかし、「子どもが分からない」というほど、私たち大人は子どもと向き合っているでしょうか。
時代は変わり、子どもの姿、格好、その言動は変わっても、子どもの本質は変わりません。そこに確信を持って非行という行動にこめられた子どものメッセージをしっかりと受け止めれば、子どもは必ず自分を取り戻します。
(「はじめに」より)
もくじ
■いま、子どもの世界に何が起きているのか
○K君との出会い
対教師暴力事件で校内逮捕/試験観察と学校の対応/付添人となって/「100円玉で買えるぬくもり/自分を大切にすること/揺れながら自立への道を模索する
○社会に翻弄される子どもたち
過激に変化する環境/時代が変えた家庭・家族/子どもを追いつめる競争の教育と学校/高度情報化・消費社会の波の中で/あいまいになった大人と子どもの境界線/希薄な人間関係といじめ/「いい子」/「普通の子」の非行/「自分らしさ」と「合わせの文化」
■非行で問われる「子ども観」
○厳罰化を強めた「改正」少年法
少年法が甘いから事件が起きるのか/審判が「裁きの場」に
○管理と排除の傾向が強まる学校
中学校の出席停止/ある養護教諭の苦悩
○問われる大人の子ども観
■「あの子をもう一度産んで育て直したい」
○ある集団暴行致死事件から
事件はこうして起きた/事件の残虐性はどこからくるのか/「子どもを愛せなかった」/それでも愛してくれますか
○地域社会と子どもたち
「改正」少年法適用第1号か、と/「事件」は起こった/地域で —嘆願書名に歩く/子どもを育てる地域の力を
○子どもを無条件で受け容れるとは
「この人は自分を信じてくれる」と/子どもに共感できる力
■新しい形のコミュニティ
反響呼んだ「夏休み『非行』何でも相談」/「悩みの共有」という素朴な願いから/自分を立ち上げ力へ
読者のこえ
「非行の多くは(中略)未熟な自我を防衛する手段」「非行という現象は、過激に変化する時代の波に翻弄される子どもたちの悲痛な叫びの現われ」「非行は、損なわれた自尊感情の代償行為」という表現に深く学ばされました。
「社会に翻弄される子どもたち」「問われる大人の子ども観」「それでも愛してくれますか」の部分には、著者の人間観が表れていて、とても感動しました…。(梅原利夫 和光大学 人間関係学教授)
月刊『更生保護』9月号の案内で本書を知り、大変に参考になっています。「ARASHI−その時」「KIZUNA(絆)」も読みたいと思っています。
いろいろなパターン更生をしようとする少年・少女・大人と数十名、現在まで取り扱ってきましたが、成功率87%になっていて、非常非才の小職には、教育資料(図書)として多く読みたいと常日頃、勉学に励んでいる次第です。
混沌とした世の中に、対象者とともに日夜更生活動をやっています。ご協力願います。本当に良本に恵まれました。感謝します。(福岡県・男・保護司)
少年鑑別所で法務教官として職を得ている者です。著者を2、3度お見かけしておりますので、親近感を抱いて拝読させていただきました。
職務上、様々な問題を抱えて非行に至った少年らを処遇する立場にあるのですが、どうしても少年の持つパーソナリティーや行動特性、行動傾向にばかり目が向き、「間違っている点を正せるように導く」といった使命感にばかり支配されている自分に、気づかされたのがこの本でした。
面会場面で、保護者と対峙する少年の「生の息遣い」を観察できる好機も、これまでは無駄にしていたような気がします。
愛情を注がれてこなかった少年達が、何を契機に立ち直れるようになるのか、十分に洞察し、プロとしての技能を磨く必要があると痛感しました。(千葉県・男・国家公務員)
少年犯罪による、保護観察になる少年が多数を示す現状です。家庭の教育が、両親の子に対する問題点が多く、本人の居場所(心の)がない者が多いようです。私どもは本人とはラポールを保つため努力を繰り返し継続的に計り、本人の更生のための一役を荷成っており、本書を読み参考になりました。(福岡県・男・保護司)
『教育医事新聞』の読者で、この本の紹介がありました。私にも3人の子がいます。親からすると、3人とも同じように育てたつもりでも、各々の個性の違いからか、いろいろなことで頭を抱えています。教育の現場でも、またまた難題を抱えることが多いです。
本の中にあった「私たち大人は、子どもに向き合っているでしょうか」という言葉に、ガーンと打たれた思いがしました。養護教諭の仕事の面でも「敵も味方もない、傷ついた生徒を受け入れる」。この言葉もとても心に響くものでした。
この思春期問題シリーズを読んでみようと思います。(北海道・女・高校教諭)
非行はない方がいいかもしれない。しかしこの体験があったからこその親と子の濃密な関係が得られることもある。得がたい宝のような体験かもしれない。しっかり向き合って「良かった」と思える体験にしたいです。(岡山県・女)