布の記憶

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布の記憶

布の記憶 〜庶民が織りなす哀と愛
堀切辰一 著/A5上製224P(口絵カラー14点・12頁/本文中写真30点)
2003年2月/2500円(税込)

★日本図書館協会選定図書/全国学校図書館協議会選定図書
★週刊読書人「印象に残った本・2003年上半期の収穫から」

解説

koshimaki 

ほつれ、痛み、そして繕い…。
襤褸(らんる)に深く刻み込まれた想い。
貧困と因習にあえぎながらも、ひたむきに生きた庶民の暮らしを、40年に及ぶ古布蒐集・研究をもとに現代に問う!

昭和初期の頃まで底辺に生きた女たちは、すべての点で、男に従属する立場でした。それは尽くしても報われることのうすい日々の明け暮れで、生活ばかりではなく、あらゆる面で悲惨という言葉が当てはまる暮らしだったのです。
私はこれらのことについて、人々がどのような思いで、毎日を生きてきたのだろうか、それを知りたいと長い間考えていました。知る手だてとして、往事の野良着や普段着や布きれを資料にしましたが、野良着たちはこの問いに、控えめながら力強く答えてくれました。
当時は現代に比べますと、社会福祉など無いに等しい環境でした。それを貧しさばかりではなく、いわれのない差別や、屈辱にさいなまれながら生きたのです。だがその心は決して病んではいないばかりか、むしろすこやかでさえあった。ということを数多く語ってくれています。
この本はこれらの声を、写真と文章で、今の人たちに知ってもらいたい、と思って書いたものです。
(パッチワーク倶楽部2003年7月号「私のとっておき」より)

もくじ

お宮参りの晴れ着
庶民たちのはんてん
脚絆と巻脚絆
眠る布団と寝る布団
ずぶ濡れの制服
幼い日の記憶
満州の荒野に捨てられた人たち
長襦袢
手拭い
腰巻きとおむつ
短編小説「銘仙塚」